山形県小国町で籠編みを続けるkegoya、
熊谷茜さん。
今展にも、山形から在廊くださいます。
メッセージをご紹介しますね。
Q1
図録掲載作品のタイトルと作品についてのコメントをお寄せください。
ほかに、出品くださる作品がありましたらお教えください。
A1
掲載作品「bulb basket」
ふだんから、花弁や果物や樹形など自然物の形に惹かれます。
目を留めて、ああ、水や光を吸いやすくこの形なんだなとか、
寒い時期にきゅっと固くなったところだなとか、
形と自然環境の関係が影響し合っていることに、
ここ山形に住んでいると他人事ではなく感じるのかもしれません。
にんにくを刻むとき、球根を植えるとき、
球根の形は実りを感じる美しいものでした。
いつかかごにしてみたいなと思っていましたが、
なかなかできずに何年か経ち、
でも工房からの風では作るエネルギーをもらって
タイミングとして実現したように思います。
そして、風50+のお話を頂いたときに、
「作り手の幸福な時間」というタイトルを聞いて、
このbulb basketを作ったときのことがすぐに浮かびました。
ぼんやりとした幸福感を文字にしてはじめて気づいたので、
この風50+の作成されるタイミングで
生まれるべくして生まれた幸せなかごだったんだなと思います。
「くるみ レンガ模様かご」
くるみの裏皮で、厚手のものを集めて編みます。
普通、樹皮を使ったかごは薄く削って編みますが、
縦芯に隙間をもたせることで、
巻く皮(横方向の皮)も厚いまま入れて編むことができます。
素朴で力強い樹皮を活かした、男性にも持ちやすいかごです。
「山型かご」
下記にある「世界かご文化図鑑」に載っていた
生きた鶏を入れて運ぶためのかごの形をヒントに編みました。
取っ手が小さく、原始的でありながら洗練された形です。
写真は工房からの風の会場に昔作ったかごを
お客様が連れて来てくれたときのものです。
作ったときよりしっとりとしていました。
Q2
図録冊子がお手元に届いたときの感想をお聞かせください。
A2
作品はとても純粋な形で、
その人の見ている方向や美しく存在する素材を表してくれて、
他の作家さんも含め、頭で考えたり心で感じたものを
自分の扱う素材と手が一番素直に表現できるものなんだと思いました。
今回の冊子は作品写真と文章の構成ですが
素材感がすっと伝わる写真で、
きっと素材と格闘しながらも、
埋もれそうできらりと光る素材の世界と自分を表現しようとしてきた、
素材の方からも身を委ねられている人たちの図録のようにも見えました。
Q3
12月2日いちにちだけコルトンホールに現れる「作り手の本棚」。
kegoyaさんは、どのような本をお貸しくださいますか。
A3
『世界のかご文化図鑑 自然を編む民族の知恵と技術
ブライアン・センテンス/著 福井正子/訳』
この本は文化人類学的な分野なのか、目次からかごの世界にあっという間に惹きこまれました。
素材や技法についての章も豊かな内容ですが、
4章の『揺りかごから墓場まで』は、
いかに人生のあらゆる場面にかごが登場するかに気づき、
人間の知恵と技術に気づかされます。
そして、かごが身近で循環する素材でできた、
つい何代か前の時代を想像してしまいます。
『バスケタリーの定式 かごのかたち自由自在
関島寿子/著』
かごづくりをはじめて間もないころ、
バスケタリー(かご細工、かごづくり)の意味も分からず、
かごの本には珍しい哲学的な内容で出会った本です。
かごを作る前は環境教育という分野にいて、
自然学校のスタッフをしたり、森林や地域政策のことを専攻した学生だったので、
過去の自分と現在、未来の自分をソフトにつないでくれた本です。
『アーチストかどうかは、作る物の形や用途とは全く関係ない。
物を作ったり詩や音楽を作っているかどうかも関係ない。
仕事の種類ではないとわたしは思っている。
(~略~)自分というまとまりを意識して、
首尾一貫した態度をとろうと努力すること、
そしてそのことに価値を置くこと、
こういう積りで暮らしているかどうかに関係があるのではないかしら』
どんな道を通ってもいい。『自分というまとまり』について考えて、
活かして、世界と向き合えば、かごを作る仕事に自分で価値を見い出せる、
と思えた本です。
遠方からの在廊、そして、たくさんのメッセージをありがとうございます!!
12月2日にも、いろいろなお話しが伺えそうですね。
楽しみです。
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